竹田津実 「北の森の診療所だより」

第7回 給餌台に鳥のお客のくる、1月

1月。例年我が家で酒を飲みながら、
箱根駅伝を楽しむ友が帰って正月が終わる。
 風のない朝、庭に出て温かいと感ずる。
 不思議なことだが誰もがそう感ずるらしい。
日が長くなったからでしょうと言うのが、
これも例年カミさんだった。
 調べると、日の出は冬至の日に比べて2分と変わらないが、
日没は15分も遅くなっている。
1日に1分ずつ長くなっていることがわかった。
 こんなわずかなことでも、うれしいと体は感じている。
 
律儀に毎朝やってくるエゾリスの姿が今朝は見えない。
そういえば野鳥たちの姿もない。
 双眼鏡を手に庭に出る。
 見上げると犯人がいた。
 若いクマタカである。
 彼……雄かどうかわからないが、ともかく彼と呼ぼう……は、
暮れから時々姿をみせる。



 目的はエゾリスらしい。
らしいと言うのは、彼のエゾリス狩りの成功例を、私はまだ見ていない。
 ムリ、無理と勝手に決めている。
 なぜなら、時々エゾリスの若者……これは本当に若い個体です……に
からかわれているのを私に見られているからだ。
 とまっている枝のすぐ下まで近づかれ困り果てる。
視界でない後ろ側から忍び寄られて、その足音に何度も腰を浮かせて。
 とまる枝からわずか2メートルくらいまで忍び寄られて
挑発も受け、逃げ出す姿に私は大笑いしたこともある。



 それでも今朝のようにみんなが動きを止めているところを見ると、
時には狩りが成功するのかもしれない。
 新年です。そう思ってあげましょう。


 暮れに近くのお百姓さんがやってきて、くず米です、と一袋置いていった。
 それにヒエ、アワを少し加えて、庭の給餌台に置く。
 かつて入院患者が多く、早く出ていってもらわないと困ると
退院を強要した時代がある。
 かわりに、自然の中で困ったら帰ってきてもいいようにと、
友人たちが作ってくれた給餌台である。
 今冬も雪が深くなったので鳥用の餌をプラスした。
 やってきたのはやはりスズメだった。
農村でも驚くほどに少なくなって、ふつうなら
そろそろ保護を考えましょうと言うはずなのに、
昔から悪者で通るこの種には知らん顔。
冬は群れることがあたりまえだった。
昔を知る人間には唯々淋しい風景にしか見えない。





 ミヤマホオジロもやってきた。ホオジロも来た。
これだって数は驚くほど少ない。
 人間が増えた分だけ、少ないのはあたりまえと、
識者は言っているのだろう。
人は小さくなった荒れ地やあぜ道にも
雑草はいやだと除草剤をまく。
人間様のお通りだと今日もまく。
そこくらいは残してやってほしいなあ。
生きものたちの食糧庫なんだから。