竹田津実 「北の森の診療所だより」

第12回 緑のフィルターのかかる、6月

北の地には梅雨がないというが、それもオホーツク高気圧の気分次第。
今年は例外的とか異常気象だ、温暖化のせいだと理由を並べたてる。
近年の天候は、釣れない理由をどっさりかかえて出かける
理屈屋の釣り師みたいに、あれこれと忙しい。
やっぱり雨が多い月。
おかげで裏山の木の葉が緑一色となる。
透過する光線はそれを抱いて、そこで生きる全てに
緑のフィルターをかけた。

私の持つ、診療所という小さな隠れ場所に通ずる
小道ののきにミズキの木がある。
6月に咲く花が、最初薄緑の花だと思った年もあった。
コクワの花、ミヤママタタビの花も、白じゃないと思っていた。
ベランダでうつらうつらしていると
目の疲れが治るのは、そのせいかもしれない。


春から毎日のように、うら口から私の仕事(?)ぶりを監督しているエゾリスに、
ときとして目が合うと、誘われるように外にでるようになっている。
ベランダの椅子に腰を下ろすと、彼らはいろんな世界を見せてくれた。
子どもが生まれ、ほんの一時期用心深くなって、
私は付き合いから解放されたと思ったのに、
すぐに、もう心配ありませんとばかりに私を外に誘う。
給餌台にも親子連れがやってきて、そこで哺乳。
私は「なんだい、その手抜きは」と、思わず声をかけている。



子リスはどんどん大きくなり、
庭にかけた巣箱で子どもを育てるシジュウカラをからかって、
一日何度か悶着を起こしていた。



ここ数年、エゾリスの生態写真集を作ろうと集中的に撮っている。
相手の気持ちを尊重して、ブラインドなどを張るのだが、
彼らは「そんなめんどうなことは止めなさい」とばかりに侵入してきて、
撮影にならないことが多くなった。
人が誰かを好きになると同じように、
リスの中に人間を好きになる個体が現れたようだ。
それもいいかと思う日々。