スタッフ通信

『さっちゃんのまほうのて』共同制作者野辺明子さん講演会

さっちゃんのまほうのて

先日、先天性四肢障害児をもつ親御さまたちの集まる設立3年目の団体、Hand&Footさんからご案内をいただき、『さっちゃんのまほうのて』の共同制作者の野辺明子さん、そして全国にいる「さっちゃん」のモデルのお一人でもあり、野辺さんの実娘でもある長塚麻衣子さんの講演会に、お邪魔してきました。

先天性四肢障害というのは、生まれつき手や足の指が5本より少なかったり、短かったり、欠損していたりする障害のことを指します。四肢障害をもつ子どもが生まれる確率は少ないため、これまでに身近で出会ったことがないよ、という方も多いかもしれません。そのため、親御さんは生まれた赤ちゃんのようすをみた周りの方に「どうしたの?」「なぜそうなの?」と聞かれることがなんどもなんどもあるそうです。

偕成社では1985年に、野辺明子さんと、野辺さんが立ち上げた「先天性四肢障害児父母の会」、四肢障害をもつしざわさよこさん、そして絵本作家の田畑精一さんとご一緒に、片手に障害をもったさっちゃんを主人公に『さっちゃんのまほうのて』を刊行しました。ごっこあそびで「お母さんになりたい」と言ったさっちゃんは、まわりの子が「指のないお母さんなんて変だ」というのをきいて、ふさぎ込みますが、やがてお母さんやお父さんからさっちゃんを支える声をかけられ、新しい命にふれ、元気を取り戻していく物語です。

講演会では、野辺さんが、親として娘に障害のことをどのように伝えるか考えられたこと、『さっちゃんのまほうのて』の制作過程、そして娘さんは、これまでにどのような人生を歩み、自分と向き合ってきたかということを、お話されました。

(左)野辺明子さん(右)長塚麻衣子さん

野辺さんの「生まれつきであることを恥ずかしがらずに生きて欲しい」「(障害のために)できないことがあったっていい、がんばらなくていい」という思いのもと育った長塚さんは、現在二人のお子さんを持つお母さまです。小さなころから新しい環境へいくたびに、質問をされ、「生まれつきなんだよ」「原因はわからないよ」ということを伝え続けてきた長塚さん。非常に明るく明瞭にお話しをされる様子は多くの親御様に元気をあたえてくださったと思います。また一方で、心ない言葉に傷ついたり、思春期に悩まれたりしながらも、その度にご両親に相談したり、本をよんだりして、自分と向き合うという作業をなんどもされてきたご様子が伝わりました。

*親御さまたちが講演会に聞き入っている間、となりの部屋では子どもたちが「さっちゃん」の塗り絵を楽しんでいました! みんな上手!

障害をお持ちの方の心のなかは、健常者の方はやはり100%はわからない、ときに何気ない言葉で傷つけてしまうこともあるのかもしれません。けれども、人間にはさまざまな特徴があること、そのことを知っていると知らないとでは、大きな差があります。私どもも、刊行から長い年月がたったいま、このような場でお話を伺うことができ、勉強をさせていただき、『さっちゃんのまほうのて』という本について改めて考える機会ともなりました。

いまも「さっちゃん」は生まれ続けています。『さっちゃんのまほうのて』は障害をもった方の解決の本にはなれないかもしれませんが、少しでもこの障害のことを広めることの一端になれたらと願います。

*スタッフも実は幼いころ、この絵本を親に読み聞かせをしてもらい、その後、小学校3年生のときはじめて、右手に欠損の障害をもつ友だちに出会ったとき、ごくごく自然に受け入れられたという経験をもっています。

Hand&Foot
http://www.hand-and-foot.com/

(販売部 み)