スタッフ通信

偕成社文庫100本ノック61『ひめゆりの少女たち』

ひめゆりの少女たち 『ひめゆりの少女たち』
那須田稔 作

「ひめゆり学徒隊」のこと、みなさんはどのくらいご存じでしょうか。
この本では、「ぼく」が1冊の手記をきっかけに出会った沖縄の久手堅(くでけん)さんが語り手になり、実際にひめゆり学徒隊として戦争を生き抜いた宮良ルリさんの物語がつづられています。

戦況がますます悪くなっていった1945年の3月、沖縄師範学校女子部の生徒だったルリたちは、何も知らされぬまま、「ひめゆり学徒隊」として、南風原(はえばる)の沖縄陸軍病院へと向かうことになります。そこには、戦闘で負傷した兵士たちが大勢いて、わずかな物資ときびしい環境のなか、軍医たちが必死に治療にあたっていました。ルリたちは看護婦として、そこで「お国のために」はたらくことになったのです。
そこで出会ったいろいろな兵士たちとの交流が印象的に描かれますが、なかでもルリがとくべつ仲良くなったのは、足をなくした学徒兵でした。しかし、攻めこんできたアメリカ軍から逃げるため、つらい別れがやってきます。そして敗戦の色が濃くなってきたころ、学徒隊にとつぜん「解散」がいいわたされ――

この本を書いた那須田さんは、宮良さんの手記やその他の参考文献を手がかりに、「作家としての立場から」この物語を仕上げたといいます。お話のなかで描かれる「ルリ」は、そういった資料のなかから那須田さんが読みといた「ルリ」なのですが、読んでいてつらくなるほど、ルリのこころのようすが、手に取るようにこちらに伝わってくるのです。こまかな描写も、まるで「ルリ」となって戦争を見ているようです。

戦争を体験していない私たちは、こうやって物語や手記を読んだり、体験者の話を聞くことでしか、当時のことを知ることはできません。また、そうやって知ったことをいくら積みかさねても、実際の戦争のすがたは、わからないものだと思います。ただ、だからこそ読んで、想像をめぐらせて、考える意味がある。那須田さんのことばをかりるなら、「日本人の心とからだのなかをとおりすぎていった戦争」が何であったのかを、いまいちど、考えてみなければならないときがきているのではないかと、日々のニュースを見ながら感じます。

この本の初版は、1975年です。沖縄が「返還」されて、まだまもない時期でした。代田昇さんによる解説には、以下のようにあります。

復帰後、きゅうに物価がはねあがって生活がくるしくなっていること、いぜんとして沖縄各地に残されているアメリカ軍基地……問題は山積しています。沖縄が本土とおなじようになるまでには、これからも、血のにじむようなたたかいをつづけていかなければならないことでしょう。

はたしてこのころから、この国はどのように変わり、そして変わらなかったのだろう……終戦からの70年と返還から40年が、うねって絡みあうようにうったえます。

ひめゆり学徒隊に解散が告げられ、なおもアメリカ軍の攻撃がつづく渦中に彼女たちが放りだされたのは、70年前の6月18日でした(実際にルリが伝令をつうじてそれを知ることになったのは、翌日の19日)。そして、沖縄戦の終結した23日は、「慰霊の日」として知られています。

戦争のこと、沖縄のことを、いまいちど考えるきっかけに、ぜひどうぞ。やさしくも滋味のある文章なので、小学校中~高学年くらいの子たちに、ぜひ読んでもらいたいなあ、と思います。(語り手の久手堅さんも、戦時中は国民学校(いまの小学校)の5年生でした)
「ひめゆり」に関する本や映画はたくさんあるので、ぜひいろいろなものをあわせて読んでみるといいかもしれません。偕成社のものだと『ケンの戦場日記―ぼくの沖縄戦』もオススメですよ!

(編集部 ま)